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以前から、どうして彼らがそこまで延々と喋り続けられるのか不思議だった。もしかしたら、そこには「話し方教室」などでは真似のできない、素晴らしい秘密が隠れているかも知れない。それをアレンジすれば「喋りのカリスマ美容師に学ぶトーク技術」のような本が書けるかも知れない。人々のコミュニケーション不足が叫ばれる今日、その本は売れるに違いない。印税生活も夢ではない。うむ。
金脈に最初の一鍬を入れるつもりで、私は行きつけの美容師さんに尋ねてみたのだ。
「どうして、そこまで話していられるんですか?」
「え? 僕、何か喋ってましたっけ?」
驚いた。意識して会話をコントロールしていたのではなく、まるで自転車に乗るように、小脳が勝手に口を動かしていたらしいのだ。
「どうしたら、意識しないで喋れるようになるんですか?」
「いやー、そう言われても。……意識してないこと自体を意識したことないから」
「意識してないことを意識してないという意識はあるんですか?」
「Kさん、真っすぐ前を向いていただけますか?」
「……すみません」
結局、私は宝の山の扉に手を触れることもできないまま、美容院を後にしたのであった。 |