「世界中で最も多い職業は何か」と言われたら、私は迷わずサンタクロースを挙げる。なにしろ、この夜は世界中の家庭にサンタクロースが現れるのだから。「本当に世界中か?」と言われたら、ちょっと自信がない私だ。まして「だいたいサンタクロースって職業か?」と尋ねられたら、「そんな固い話は抜きにして、まあ一杯」などと言いつつ、うやむやのまま忘年会になだれ込みたい私なのだが、いずれにせよクリスマスの夜、誰もがサンタになることは疑いのない事実である。
しかし私は、そんな状況に一石を投じたいと心から思っている。
思い出してほしい。子どもの頃は誰もがサンタの存在を微塵も疑ってなかったはずだ。しかし、ある時にその不合理さに気づくのだ。「ウチにはエントツがないのに、どうやってサンタは来るのかな? それから、他人の家に入るのに、サンタはなぜ捕まらないのかな?」と。
そしていつか、最も合理的な解釈……つまり真実に到達するのだ。「そうか、サンタの正体は……」。
そこまではいい。問題はその後だ。サンタの正体を知った瞬間、一人くらい「みんなで僕を騙してたんだね! グレてやる!」などと大声でわめいても良いと思うのだが、そんな理由から道を踏み外した人の話を私は聞いたことがない。翌年も、その翌年も、サンタの正体に気づきながら、これまでと同じ儀式は続くのだ。当のサンタも、子どもたちが気づいたことに気づいているというのに、相変わらずの茶番を繰り返しているではないか。どちらからも「もう、今年でやめようよ」と言い出さない。これはどういうことか。
騙されていた子どもが、自分が騙されていたことに気づき、今度は親を騙し始める。しかし、小さな頃に負った心の傷は決していえることはなく、成長してからは友人や恋人すらも騙し始める。そして行き着く先は、恐ろしいことに、わ、わ、我が子をすら騙してしまうのだあああっ! 愛情をそそぐべき我が子を騙すなんてえええっ!
これは明らかに「騙しの連鎖」ではないか。
幸い、これを読んでおられる人の多くは、もうクリスマスにプレゼントをもらえない「大人」の人たちだと思う。もしかしたら、子どもの頃の辛い経験から、今でも恋人や子どもを騙したり、騙されたりしている人もいると思う。だからこそ、声を大にして言いたい。
「もう、そんな無益な連鎖をやめよう」と。
今年あたり、家族や恋人同士で、腹を割って話し合ってみてはいかがだろう。 |