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第12回交通警察

 筒井康隆に「佇む人」という作品がある。これは政府に反抗的な態度を取った人が植物化手術を施され、徐々に人としての感情を失い、生きながら「」(にん)という植物になってしまうという近未来の物語である。

 ところで朝の通勤時間など、駅の構内で台の上に仁王立ちして周囲にプレッシャーをかける鉄道警察の人を見ると、私はいつもこの小説を思い出す。そして、いつかこの人も人としての感情を失い、植物になるのかなあ、などと余計な心配をしたくなる。

 どうして彼らは、あそこまで頑なに動かないのだろうか。たとえば同じ不動の人でも、ロンドンの衛兵は交代式という「動き」があるからいい。しかし交通警察の人が警備を交代する姿を見たことがあるが、軽く敬礼をするだけの極めてシンプルな儀式であった。

 確かに、警備なのだから不必要な愛敬を振りまく必要はない。私が言いたいのはもっと実践的なことだ。たとえば事件が起きたとき、ずっと同じ姿勢で緊張して立っていたのでは、100%の瞬発力を発揮できないと思うのだ。事実、どの格闘技でも、仁王立ちを基本姿勢とする武術は存在しない。いざという時、瞬時に戦闘モードに入るには、普段から緊張していてはダメなのだ。

 僭越ながら、私は提案する。鉄道警察の人たちは、もっとリラックスした方がいい。同時に、適度に身体を動かしていた方がいい。

 そこで私は考えた。適度に身体を動かしながら、周囲に犯罪抑止のプレッシャーを与える方法。それは、各自が最も得意とする「武器」を威嚇のために見せればよいのである。たとえば射撃が得意なら、拳銃の早撃ちの練習をするのだ。警棒にチェーンをつけてヌンチャクのように振り回してもいい。内ポケットからスタンガンを取り出して空中放電するのも効果的だ。要は、自分が最も得意とする「武器」をアピールすればいい。武器はいろいろ考えられる。IT捜査が得意なら、目にも留まら
ぬ「キー入力」を披露する。他に、尾行につきものの「変装」や、取調室につきもののカツ丼を作るための「玉子の早割り」なども、武器だと思えば認めてあげたい。

 

 駅構内のいたる場所で、高い台に乗った警官が芸をしているのだ。そうなれば、なんだか馬鹿馬鹿しくなって、駅構内で事件を起こそうとする人は激減するに違いない。それに、年末の忘年会の出し物もバッチリだし。そんなコトになれば、殺伐とした通勤時間も少しは楽しくなると思うのだが。


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