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第17回ロックンローラー

さてロックンローラーは職業なのだろうか。試しに、周囲に自称ロックンローラーがいたら、ぜひ尋ねてみてほしい。

「ロックンローラーは職業か?」と。

すると、彼らはこう言うはずだ。

「馬鹿を言え。ロックンローラーとは生きざまだ!」。

そんな彼らをロックンローラー(長いので、以下「RR」と略す)たらしめているのは、決して「演奏する音楽がロックである」という事実だけではないと思われる。たとえば音楽誌のインタビューで、彼らはRRとして発言しなくてはならない。もちろんテレビに出ても、RRとして振舞う。なぜなら、それがRRなのだから。

それは、メディアの上だけの話ではない。彼らは、生活の上でもストイックにRRでなくてはならない。

たとえば、だ。

RRたるもの、中途半端な家に住んではならない。住むなら、高級住宅地でプール付きの大邸宅。ストイックに大邸宅というのも変だが。あるいは、ホテルのような船に乗って世界を転々とするか、無人島を買い取って自分の王国を作るか。でなければ、陽の当たらない四畳半。それ以外にあり得ない。決して首都圏から1時間のベッドタウンの庭付き一戸建てに住み、毎朝ワンちゃんとお散歩なんて生活は許されない。RRにはチワワもパピヨンも似合わないのだから。

趣味だってそうだ。

RRの趣味といえば、酒とタバコとドラッグとセックス。ダメなのはゴルフや早朝野球。とにかく朝が早い時点でRRには無理だ。

他にもファッションやクルマでも、RRはRR的な選択をしなくてはならない。休日の過ごし方、食べ物の好き嫌い、お風呂の温度、好きな観光地のお土産、毎朝、時計代わりにつけておくニュースバラエティの選び方まで、あらゆる行動において、RRらしさが優先されなくてはならないのだ。

しかし、ちょっと問題がある。

誰もが自分の仕事でお金を稼ぎ、生活の糧(かて)を得る。同時に、国民として税金を支払っている。そして、仕事に必要な支出は「必要経費」として認められることは常識だ。

その場合、もし彼らがRRとしてお金を稼いでいるとしたら、RRの「生きざま」は「必要経費」になるのだろうか。

たとえば楽器。これは音楽活動に不可欠なため、問答無用で必要経費だ。ではプール付きの大邸宅は? これは必要経費というには苦しい。同様に船や無人島もダメだろう。四畳半も関係ないと判断される確率は大きいが、四畳半でないと楽曲を作れないという特別の事情があれば必要経費になるかも知れない。

しかし、その他の物になるともう壊滅状態である。

酒……ダメ。
タバコ……ダメ。
ドラッグ……ぜんぜんダメ。ていうか犯罪。
セックス……ありえない。

鋲つきのGジャン……ステージ衣装ならOKだけど、オフステージで着たらアウト。

生活のすべてでRRであることが求められるRRなのに、その多くは必要経費として認められないのだ。他人事ながら、RRの経理関係が心配でならない。

もしかして、彼らは酒を飲んでちまちまと領収書をもらい、接待交際費という名目で落としているのかも知れない。あるいは老後に備えて、国債を買うかドルで積み立てをするか迷っているのかも知れない。そして大いに悩んだあげく、彼らはこうつぶやくのだ。

「オレの年金、大丈夫だっけ?」

でも、それは彼らにとって何も矛盾したことではない。試しに、彼らに「それでもロックンローラーか?」と訊いてみるといい。

すると、彼らはこう言うに決まっている。

「これがロックンローラーの生きざまさ」と。


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