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第19回タバコ販売員

最近のテクノロジーの進歩はめざましい。先日、こんなニュースを見つけた。

「成人識別機能付たばこ自販機、2008年より本格導入」

要するに、タバコを買おうとしている客が成人かどうかを機械が勝手に判断し、未成年にタバコを売らない自販機が登場するらしい。

すごい!

……と思ったのだが、よく考えたらどうも怪しい。

いくらテクノロジーが進歩しても、しょせん機械は機械だ。血も涙もない鉄のカタマリに、人間様の年齢が分かるはずがないではないか。人間のはしくれである私ですら、飲み屋のお姉ちゃんに「ワタシいくつに見える?」って聞かれて、踏み絵を前にした隠れキリシタンのようなイヤな汗を流すというのに。

絶対、このニュースはウソだと考えていたら、私は別の可能性に思い当たり、この「成人識別機能付たばこ自販機」の恐るべき秘密にアッサリと気づいてしまった。関係各位には申し訳ないが、私は真実を語らねばならない。

実はこの自動販売機には、アルバイトのヒトが入っている。そして巧みにカムフラージュされた小窓から客を眺め、瞬時に未成年かどうかを判断してタバコを売るかどうかを決める。よく消費者金融で「無人の窓口」と言っているが、実際には中にヒトがいるのと同じだと思えばいい。そうに違いない。

この仕事、ずっと座っているのは辛いと思うかも知れないが、基本的に客がいなければ何をしていても良いので、実はけっこうラクだと思われる。内部に取り付けられたライトでマンガを読んだり、メールだってし放題。居眠りをしていても、コインが頭に当たって起こしてくれる。中で別のバイトもできるし、集中して勉強もできる。知り合いに会っても中に誰が入ってるかなんて分からない。

これで時給が1050円(推定)だというから、暇を持て余した主婦や学生さん、受験生、帰るべき家のない特殊な人種にも最適だ。

問題はトイレと食事だが、最近はポータブルトイレなんて便利なモノがある。食事も10秒で済むから大丈夫。トイレと食事が同じ空間というのが気になるが、そこは仕事と割り切って欲しい。それから設置場所によってはアルバイトが交代するタイミングが難しいが、そこは夜中にサッとやればいい。

梶井基次郎風に言えば、「タバコ自販機には、ヒトが入っている」のである。

だから。

もし来年、あなたが夜中に道を歩いていた時、自販機の陰からヒトらしきモノが出てきて、目が合ったら慌てて姿を消したとしても、幽霊や宇宙人だなどと騒がないで欲しいのだ。

それは、JTの密命を受けて労働する、ご近所の知り合いかも知れないのだから。
(でも、銀色に光る手が伸びてきて円盤で連れ去られたら、それは宇宙人の可能性があるので注意が必要です)。

※今回の内容はフィクション……というより、筆者の妄想です。本来の「成人識別機能付たばこ自販機」は、日本たばこ協会が成人のみに発行する非接触型ICカードで判断します。


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