世界一有名な考古学者といえば、誰を思い出すだろう。吉村作治? まさか。シュリーマン? いい線だねえ。でも違う。答えは、我らが「インディ・ジョーンズ」博士に決まってる。
しかし勘違いしてはいけない。すべての考古学者が古地図を片手に財宝を探す冒険に出かけ、悪の組織と闘い、最後に美女とキスをするわけではない。考古学者の日常は地味だ。まして助手以下の身分ともなれば、エジプトでピラミッドの石をうず高く積み上げた人々と何ら変わらない日常が待ち受けている。
毎日、炎天下の下で少しずつ土を掘る。彼らの作業は土木工事にきわめて近い。ただ、土木工事の現場であればシールドマシンやパワーショベル、手作業でもスコップなどの利器を使うはずだ。しかし考古学者たちが手にするのは、刷毛である。ハケ。この頼りない武器をとり、彼らは地球に立ち向かい、古代と現代を結ぶ「失われたリンク」を探すのだ。一般的に、刷毛は土と闘うことを目的とする道具ではない。これがリアルな戦争なら、戦闘の前に勝負はついたと言わざるを得ない。
しかし、彼らの地味な作業はこれで終わらないのだ。なぜなら、彼らは発掘した多くのカケラを復元しなくてはならないのだ。言ってみれば、世界に一つしかない立体ジグソーパズルである。普通のパズルとの違いは、そのピースがすべて揃っているかどうかは誰も知らないということ。なんて底意地の悪いパズルなのだ。
まだある。こうして復元された史料が、一体いつ頃の何であるか、そしてどんな意味を持つ物かを自分の知識と経験を駆使して判断しなくてはいけない。当たり前と言うか。ならば問う。その判断が正しいかどうか、誰が教えてくれるのか。
「あ、それは僕が2世紀初めに作った土器だ。懐かしいなあ」
なんて言い出すヤツがいたら、ほぼインチキだ。逆に考えたら、考古学者の結論の正しさが証明されることも同様にあり得ないのだ。 |